大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和36年(ラ)181号 決定

抗告人 石田博

相手方 石田敬子

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨並びに理由は別紙に記載のとおりである。

よつて審按するに、原審判に挙示の証拠資料によれば同審判の認定した事実は全部これを肯認することができる。

抗告人は、相手方は抗告人家を飛び出し和歌山市方面でサービス婦となり後実家の母の許に帰り抗告人を遺棄したものであり、又金銭計算のもとにいやがる長女千恵子を連れ帰つているものである旨主張するけれども、これを認めるに足る何等の資料も存在しない。してみると原審判の認定した事実からすると相手方が現在抗告人と別居しているのはやむを得ないところであつて、別居するにつき正当な理由があるものと解するのが相当である。しかして夫婦が別居している場合において、その別居するに至つた責任がいずれにあるにせよ子の養育費は婚姻費用の負担者が負担すべきものというべく、又配偶者の一方が正当な理由があつて別居する場合においては、その相手方は右配偶者自身の生活についても両者の別居のやむなきに至つた責任の所在なり過去における扶助の態容資産状態職業能力その他諸般の事情を考慮してその配偶者の最低限度の生活維持のための費用を負担すべき義務あるものと解すべきであつて、本件における当事者双方の別居するに至つた経緯なり双方の資力生活程度扶助を要する状態等一切の事情を考慮すると、抗告人が相手方に対し長女千恵子の養育費を含めて原審判の定める程度の婚姻費用を負担支弁することはやむを得ないところといわなければならない。

よつて原審判は相当であつて本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用につき民事訴訟法第八九条第九五条に則り主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小野田常太郎 裁判官 亀井左取 裁判官 下出義明)

抗告理由〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例